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だから今こそ「専門学校へ進学」という選択肢を

大学進学率は、バブル期36%、今は58%

 少子高齢化の著しいいま、子どもたちの進学事情について昔と比較すると、著しい変化を遂げていることがわかります。「団塊ジュニア」とか「第二次ベビーブーム」と呼ばれる世代(1971~74年頃)の年間出生者は約210万人でした。一方で現在の高校3年生が生まれた世代に当たる2005年の出生者は約106万人と、ほぼ半数になってしまっています。
 団塊ジュニア世代の出生者数が今の2倍ものボリュームがあり、その世代が大学受験を迎える1990年前後は、今よりもはるかに大学の数・定員が少なく、また当時は空前のバブル景気であったことから、大卒であれば名門か否かを問わず、就職先はいくらでもありました。そして大卒で就職できた者は、生涯安定した収入とポストが約束され、企業の中枢で働けるという高学歴信仰が加熱しました。
 あのバブル期の頃から30年が経過した今、短期大学を含めた大学進学率を比較すると、前者が36.3%(平成2年/1990年))で、後者が58.1%(令和元年/2019年)となっています。2022年度の調査では、定員割れした私立大学が過去最多の284校で全体の47.5%を占めるほどになっています。(日本私立学校振興・共済事業団調べ)
 つまり、高校を卒業した者であれば、特に学校名や学部などにこだわらなければ、誰もが大学へ行ける時代となってしまったといえます。

選ばなければ大学へ行けるのに、4人に1人が専門学校を選ぶ

 一方で、専門学校への進学率を比較すると、平成2年(1990年)が28.8%で、令和元年(2019年)が23.6%でした。30年かけて5%ほど減っていることになりますが、実はこの30年の間に、専門学校をめぐる法制度の改正が幾度かあり、専門学校の統廃合や組織変更、そして多くの専門学校が4年制大学を改変するなど、数々の改革がなされてきた教育業界が専門学校でもあります。つまり、専門学校が大学に転身することはあってもその逆はないため、専門学校の総数は減少しています。しかし、進学率の差はわずか5%です。
 かつては「大学へ行けなかった人の緊急避難所」という格下の学校という印象があった専門学校ですが、実は、専門学校をあえて選んで進学する人たちが一定数存在します。

就職の機会が2倍、コスパ最強の資格と即戦力

 中堅どころの私立の4年制大学と、大手専門学校の2年課程を比較してみます。大学の方は経営学部、専門学校の方は会計学科としましょう。
 現在、私立4年制大学文系学部の諸費用含む授業料の相場は年100万円程度ですから、卒業までで4年間400万円が必要です。4年制大学では、経営学部などに入学しても、入学後2年間は専門科目以外の教養科目などを中心に学び、会計や経営に関する専門的な科目は大学3年次から学ぶことになります。
 一方、一般的な専門学校の会計学科では、年間の授業料は大学と同じ100万円程度ですが、修業年限が2年間のコースであれば、200万円で済むということになります。専門学校として全国展開している大原簿記学校や立志舎などの会計専門のコースでは日商簿記2級程度なら、入学後数か月以内に全員に取得させるくらいのカリキュラムを用意しており、希望すれば税理士・公認会計士なども目指せるくらいの専門的な授業も行われます。したがって、わずか2年間の在籍でも経理・会計の知識については即戦力となれる可能性があります。
 つまり、専門学校は4大卒よりも圧倒的に早く専門的な知識を身につけることができます。一定の技能を証する資格を有していれば、企業の採用担当も安心して内定を出せるでしょう。また、修業年限が2年以上で授業時数が1700時間以上の専門学校なら、大学への3年次編入の資格も有するため、今まで払った時間と学費を無駄にすることなく、大学へ進学することが可能です。

専門学校の就職率は大学よりも高い

 文部科学省が毎年集計して発表している「学校基本調査」によれば、1989年以降、専門学校の就職率は常に大学よりも高く、近年ではITバブル崩壊後の大卒就職率55%に対して専門学校は77%(2003年)、リーマンショック後の大卒就職率61%に対して75%(2010年)と、景気に振り回されにくいという面があります。

 大学には4年間じっくり学べるという良さがあるのは事実です。ただ、専門学校には技能や資格といった、評価しやすいスキルを示せるというのがメリットです。4年を費やして就職活動で失敗するリスクを考えれば、2年で就職できる選択肢も悪くないかと思います。
 
松本肇(教育評論家)

松本肇(まつもと・はじめ)
教育ジャーナリスト

専門分野は大学改革支援・学位授与機構を活用した学費取得方法、通信制大学・通信制高校・高卒認定試験・専門学校など。著書「短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒」等。
いわゆる「学歴フィルター」と呼ばれる価値観よりも、大学で得られる「アカデミックスキル」という数値化しにくい教育の有無に関心がある。
フジテレビ「めざまし8」、「ホンマでっか!?TV」、ABEMA「アベマプライム」などでゲストコメンテーターを務める。