やりたいことが決まっていない、
高校3年生が検討すべき進路とは
やりたいことが決まっていない、
高校3年生が検討すべき進路とは
2024.11
やりたいことが決まっていない、
高校3年生が検討すべき進路とは
やりたいことが決まっていない、
高校3年生が検討すべき進路とは
2024.11
あまり勉強が好きではないが、みんなが行くから高校へ進学した。高校では特に部活を頑張ったわけでもないし、勉強もそこそこで、優秀というわけでも無い。ただ、同級生は進学情報誌を開いて、どこの大学へ行こうか、何を学びたいかを話し合っている。高卒で就職というのもいいけれど、良い就職先を見つけるには大学を出た方がいいといわれている。高校までは就学支援金という制度があって、学費の大半が無償化されていたけれど、この先は高額な学費を払い、場合によっては奨学金という名の借金を背負うことになる。 英語を学びたいなら文学部英米文学科か、経済学を学びたいなら大学の経済学部へ行けばいいことはわかっているけれど、大きな借金を抱えてまで進学する意味があるのか。また、地方在住者は都会の学校へ行くべきなのか、考え方の提案にお付き合いください。
文部科学省が発表した令和5年度の学校基本統計(確定値)によると、令和5年3月に高等学校を卒業した人たちの高等教育機関進学率は84%にのぼります。内訳としては、100人の高校卒業者のうち、58人は大学、22人は専門学校、3人が短期大学へ進学するということです。
文部科学省「令和5年度 学校基本統計(確定値)」より転載
https://www.mext.go.jp/content/20230823-mxt_chousa01-000031377_001.pdf
これは、「みんなが進学するから」という実情もありますが、高校卒業の学歴だけでは就職が不利になるから、とりあえず何らかの教育機関に身を置いた方が無難という考え方から来る選択行動といえるでしょう。 しかし、例えば高校によっては学力や偏差値の問題で、学校を選べないとか、選べるとしても定員割れを起こしているような学校しか進学できないという人も多いとみています。
現在の日本は少子高齢化が叫ばれていることから想像できると思いますが、大学入試そのものは、伝統校や名門校、特定の資格が取得できる学部・学科を除けば、総合型選抜・学校推薦型選抜などを使うことで、競争率そのものは高くありません。しかし、例えば高校の出席日数が少ない、評定平均が低いなど、受験することもままならないという事情の人もいれば、そもそも進学して何を学べばいいのかわからないという人も多いようです。実際に最近の進学相談では、「文系の大学か専門学校」と、漠然とした方向性しか示せない生徒も多く、致し方なく生徒の適性を考えずに「とりあえず簿記を勉強してみたらどうか」「IT系のスキルを伸ばした方がいいのではないか」といった回答しかできないケースも多いようです。ただし、このようなアドバイスも間違いではありません。なぜなら、簿記は全ての業種で必要なスキル・人材ですし、IT系といえばマイクロソフトオフィスや画像・動画編集ソフトなどを活用する場面も少なくないため、進学した学校で指導を受け、それなりに頑張ることで一定のスキルや資格を狙える学校へ行けば、「つぶしがきく」という意味では企業が求める人材となり得ます。
東京ではMARCH(マーチ)や日東駒専(にっとうこません)と呼ばれる私立大学の分類があります。MARCHは明治・青山学院・立教・中央・法政大学、日東駒専は日本・東洋・駒沢・専修大学といった、一般選抜での受験偏差値が50~60程度の名門校・伝統校をひとくくりにした分類です。関西では「関関同立(かんかんどうりつ)」というのが有名で、こちらは関西・関西学院・同志社・立命館大学のことを指します。こうした分類は、かつて出版社や予備校などが取りまとめた分類で、しばしば、学歴の序列のようなことに使われる分類法で、「学歴フィルター」と称して企業などが学生の採用基準を決める道具にされることがあるため、どうにかこのくくりの大学へ入学したいと考える人も多いようです。もし地方都市に住むあなたが、法律学を学びたくて、都内の大学をいくつか受験したところ、たまたまMARCHに属する大学の文学部国文学科に合格してしまったとします。一方で、あなたの地元の,あまり有名ではない大学の法学部にも合格してしまった場合、どちらを選ぶべきでしょうか。もちろん、どちらを選んでも構いませんが、私は基本的に好きなこと、続けられること、やりたいことができる方を選ぶべきと思います。
近年、大学の授業料や生活費を貸与型奨学金でまかなったところ、大学卒業時に400~500万円もの借金を背負うことになり、それを20年かけて返済していくことになった新卒社会人の話題が多く寄せられています。新卒社会人の初任給の平均は22~23万円といわれていて、ここから税や社会保険料を引かれると、手取りは15万円程度といわれています。ここから生活費を捻出した上、20年間、月額2~3万円を返済していくことを考えると、むしろ高卒で就職してしまった方が良かったのではないかと思う人も多いはずです。そう考えると、実は大学ブランドを選ぶよりも、学費や生活費を計算した上で、可能な限り、自宅(実家)に近い、学校を選ぶ方が賢い選択といえます。
学費ナビで私立大学を「学費の安い順」で検索してみたところ、以下のような検索結果が出ました。
福岡県の福岡大学、商学部二部は、4年間の学費が171万円とあります。続いて大阪経済大学が200万円、熊本学園大学が210万円とあります。いずれも二部、つまり夜間部ではありますが、どの学校も4年制大学ですので、学士が得られます。ちなみに福岡大学をクリックしてみると、一人暮らしをした場合の家賃・光熱費などの生活費を含めた費用をシミュレートできます。
二部であれば、大学にほど近い企業で仕事をしながら通学することも可能です。つまり、奨学金を借りるにしてもそれを最小限にして、働きながら学ぶことで、将来の負債を減らすことができます。
同じく学費ナビで専門学校を検索してみると、1年間の学費が0円の専門学校がヒットしました。タキイ農場付属園芸専門学校は、学費に加え、寮費や食費も無料となっていて、農業の若手育成をはかるための研修施設的な学校といえます。
何をやるか何も決めていない、決まっていないという人にとって、学費0円とか格安の学校は借金を負わずに学べるという意味ではリスクが少ないので悪くないと思います。ただし、専門学校へ進学する場合は、2年制以上で、かつ「専門士」の称号が取れる学校へ行くことをおすすめします。専門学校は、かつては職業訓練を行い、関連業種への就職率が高いだけの学校と思われていましたが、平成11年より、2年制以上で総授業時数が1700時間以上の専門学校修了者は大学3年次への編入が認められることになりました。つまり、専門学校修了後に企業へ就職してもいいし、編入を受け入れる大学へ進学すれば、2年で卒業して学士を取得することも可能で、その時にもう一度「新卒」での就職活動ができるということです。
今の日本の就職事情では、「新卒採用」を基本としています。高校卒業、専門学校修了、大学卒業など、学校を卒業したタイミングであれば、人材育成を前提に採用します。もし、進学先に迷うのであれば、学費ナビを含む様々な情報を収集し、学費や通学にかかるあらゆるコストを計算して、就職につながる学校を選んでみてはいかがでしょうか。
松本肇(まつもと・はじめ)
教育ジャーナリスト
専門分野は大学改革支援・学位授与機構を活用した学位取得方法、通信制大学・通信制高校・高卒認定試験・専門学校など。著書「短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒」等。
いわゆる「学歴フィルター」と呼ばれる価値観よりも、大学で得られる「アカデミックスキル」という数値化しにくい教育の有無に関心がある。
日本テレビ「DayDay.」、フジテレビ「めざまし8」、「ホンマでっか!?TV」、ABEMA「アベマプライム」などでゲストコメンテーターを務める。