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共通テスト時代の「勉強」とは

共通テスト時代の「勉強」とは

年明けの大学入学共通テストは、初の新課程実施となります。これにより「高大接続改革」が完成することになるといえます。
共通テスト時代の勉強は、どうあればいいのでしょうか。

高校と大学の教育も一体の「高大接続改革」

高大接続改革というと、多くの人は「大学入試改革」と同じ意味だと思い込んでいます。しかし実際には、まず大学が社会から信頼されるための「大学教育改革」が先行していました。議論の過程で、大学関係者から沸き起こってきたのが「入学生を送り出す高校側の教育も変わってもらわなければならない」という声でした。しかし高校関係者には「大学入試が変わらないと、高校教育は変われない」という思いが昔からあります。
それなら高校教育、大学教育、大学入試を「三位一体」で変えよう……というのが、高大接続改革の発想でした。大学入試改革は高校の旧課程下で始まりましたから、新課程に移行してはじめて完成形になるわけです。

注)平成26年12月22日 文部科学省中央教育審議会 答申資料から引用

センター試験を共通テストに変えた理由

共通テストの前身である大学入試センター試験(1990~2020年度)は、分量も内容もバランスの取れた「良問」を出題していると、関係者間での評価は高いものでした。
しかし実質的な「大学全入時代」に入り、昔に比べれば受験競争はずっと緩和されました。すると受験生の中に、そこそこ勉強すれば偏差値もある程度上がり、高望みしなければ、それなりに名前を知っている大学には入れる――という感覚が広がってしまいました。
そんな学生ばかりでは、入学後の学生の教育改革に力を入れても、効果は期待できない――。そうした危機感を抱いて構想したのが、センター試験を共通テスト(当時は「大学入学希望者学力評価テスト」と仮称)に衣替えすることでした。単なる知識の暗記ではなく、知識を使って思考力や判断力を働かせて解く問題を中心にしようとしたのです。

いつまでも「過去問対策」でいいのか

共通テストは、既に4回行われました。新課程への移行で、出題傾向は更に変わることでしょう。過去問に基づく対策でクリアしようとすれば、足元をすくわれかねません。
そもそも高大接続改革では、必ずしも正解がなかったり一つではなかったりする今後の複雑な社会を見据えて、自分たちで課題を発見して納得できる解を模索できる力を育てようとする教育改革を目指していました。
共通テストの問題文に、先生と生徒や生徒同士の会話文が出てきたり、授業の様子が出てきたりするのも、普段の授業でしっかりとした思考力などを身に付けた上でその力を発揮してほしい、という意図からです。
思考力中心の共通テストは、当初からセンター試験より難易度は上がると想定されていました。実際、多量の問題文を読んで必要な情報を取り出して考え、判断しなければ解けない問題が多くなっています。

「年内入試」でも逃れられない「学力」

そのため共通テストなど一般選抜を避けて、その前に総合型選抜や学校推薦型選抜で入学を決めてしまう「年内入試」志向が徐々に高まってきました。24年度入試では、全入学者に占める一般選抜の割合は47.5%(前年度比0.4ポイント減)、年内入試は51.0%(同0.3ポイント増)と、今や年内入試による入学者の方が多く、その差も拡大しています。

注)文部科学省「令和5年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」から引用

しかし、年内入試を甘く考えることはできません。ベネッセコーポレーションの調べでは、模試の偏差値が高い私立大学ほど、総合型・推薦型いずれでも小論文を必須にする傾向が強まることが分かりました。

注)ベネッセホールディングスの「大学入試最新動向に関する記者説明会資料」から引用

そもそも大学入試改革では、総合型や推薦型でも、小論文などを使って思考力などの学力をきちんと把握するよう求めています。やはり高校の授業にしっかりと取り組むことこそが、高大接続改革時代の「受験対策」だと言えそうです。

渡辺敦司(わたなべ・あつし)
教育ジャーナリスト

1964年北海道出身、横浜国立大学教育学部卒。教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て98年よりフリー。主著に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社、2022年10月)。