学費ナビ

私立大の約840学科で学費引き上げ

~上がり続ける学費について~

私立大の約840学科で学費引き上げ
~上がり続ける学費について~

2024年は、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)で国立大学の授業料の引き上げの提言(※1)や、東京大学の授業料の改定(※2)など、国立大学の学費に関するニュースが大きな話題になりました。
それに対して私立大学の学費の値上げに関してはニュースとして取り上げられることも少なく、値上げが行われていることは分かっても、その実情を知ることは難しいかもしれません。
「学費ナビ」では、新増設等の前年比較ができない大学・学科を除く私立大学3,801学科(577校)を対象に各大学の学科単位で学費の増減について調べた結果、初年度納入額で全体の約22%、卒業までの総額で約24%の学科・大学で値上げした実態がわかりました。

分かりにくい私立大学の
値上げの状況

私立大学の学費は、国立大学とは異なり大学・学部ごとに異なります。学費の改定についても、いつ、どのくらいの増減を行われるかも大学ごとに異なります。
文部科学省の「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査」(※3)の「平均学費の推移」を見ると、下のグラフのとおり平成27年以降は毎年ゆるやかに上がり続けていることが分かります。

●私立大学学部 平均額の推移

※総額は、[入学料]+([授業料]+[施設設備費])×4年間で計算した参考額
文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」を元に作成

令和5年度の場合でも、令和3年度の前回調査との差額は8,201円(0.6%)の増額と、あまり変わっていないように見えます。しかしこの数字はあくまでも平均額のため、実際に値上げを行った大学を個別にみていくと大きな差があります。
また、上の表を見てお気づきになると思いますが、入学金は毎年下がっているのに対し、毎年納入が必要な授業料は値上げとなっています。これは初年度納入額が下がっていても、卒業までの総額は“実質的な”値上げとなっている場合が含まれていることを意味しています。
このように分かりにくい私立大学における学費の値上げの現状について、「学費ナビ」のデータから掘り下げて調べてみます。

2025年度は
2割強の大学・学科が学費を値上げ

上の資料はあくまでも平均額の推移で、全ての大学で値上げが行われているわけではありません。では実際どのくらいの大学が、いくらくらいの値上げを行っているのでしょうか?

●学費の値上げを実施した学科数

「学費ナビ」のデータから、2025年度の学費が値上げになっている学科・大学を調べると、初年度納入額では、844学科(107校)で、これは全体の約22%にあたります。
また卒業までの総額で見ると、906学科(116校)となり、“実質的な”値上げになっている大学・学科は多くなっています。

昨年の調査では初年度納入額の値上げが676学科(91校)、総額が723学科(103校)でしたので値上げの傾向はより大きくなっています。
上の表を見ると、「値下げ」が行われたのは88学科(22校)ありますが、その中の約6割にあたる53学科(11大学)では、総額が改定前より高い“実質的な”値上がりとなっています。

値上げの平均額(総額)は
人文科学系17.8万円から理学系21.1万円

ではどのくらいの金額の値上げが行われているのでしょうか?
総額で見た場合に、5%未満の値上げが620学科(90校)で16%、5%以上が286学科(41校)で7%となっています。
実際の金額は、値上げが行われた学科の総額の平均は概算で、文系では人文社会系の学科で平均17.8万円、社会科学系17.6万円、理系では理学系21.1万円、工学系20.2万円となり、文系より理系の方で値上げ幅が大きいことが分かります。

●学問系統別の値上げを行った学科数と最高額・平均額

上段:初年度納入額/下段:卒業までの総額

学費改定はいつ行われる?

学費の改定が行われるタイミングも私立大学では各大学によって異なります。
多くの大学ではカリキュラムの改定などさまざまな大学の必要経費の増加があった場合や、物価の上昇などに応じて不定期に改定されます。
その一方で毎年物価指数などに応じて一定額の値上げを行っている大学もあります。
私立大学では学費の改定が事前に公表されることは稀です。殆どの大学では募集要項等と同時期に、次年度入学生の学費もあわせて公表されています。出願の段階まで実際の納入額が分からないということもありますので、オープンキャンパス等に参加した際には学費改定の予定があるか、確認してみてもよいでしょう。

学費スライド制

ここでは「初年度納入額」の値上げについて説明してきましたが、2年次以降に授業料等の値上げを実施している大学もあります。
ひとつは「学費スライド制」などと呼ばれることもあり、次年度への進級時に毎年一定額が値上げされる制度です。
また費用が多くなりがちな入学初年度の学費を下げて、入学後に按分することによって毎年の納入額を一定額にしている大学もあります。
学費の試算をする際には注意が必要ですが、こうした大学は募集要項等に内容が掲載されていますので、金額だけではなく補足情報にも目を通すようにしましょう。

学費の値上げ要因

大学の学費の値上げについては、様々な要因が絡んでおり、具体的には以下のような理由が挙げられます。

【教育環境の向上と学生サービス】 建物や設備の維持・管理に加え、ICTに関わるインフラの整備やアップグレード、教育のグローバル化による留学生の受け入れや、海外の大学との連携強化などにも多額の資金が必要となります。またキャリアサポート、メンタルヘルスケア、学習支援など学生へのサービスを充実させることも必要です。こうした教育環境の向上と学生サービスの拡充のために学費を値上げすることがあります。
【物価上昇】 またインフレ率が上昇すると大学も運営コストが増加し、人件費、光熱費、通信費、教材費など、全てのコストが物価上昇に伴って増えるため、その分を学費に転嫁する必要が出てきます。
【財政の安定化のため】 大学は持続的な運営を続けるために財政の健全化を図る必要があります。大学の収入は学生からの学費収入と、国からの助成金で成り立っているため、入学者の減少が収入の減少に直結してしまいます。学生数の減少により、一人当たりの学費を上げざるを得ない状況になっている大学が増えているという現状もあります。

情報のアップデートと値上げを前提としたマネープランが重要

一時に大きな出費になる学費、早いタイミングで志望校の学費を調べることが重要なことは言うまでもありません。高校1、2年生の内から大学のパンフレット、ホームページなどで情報を収集していたけど、いざ受験の段階で志望校の学費が値上げ、準備していた資金が不足、ということも志望する大学・学科によってはあるかもしれません。
物価の上昇だけを見ても、学費の値上げを避けることは難しいといえます。大学進学を目指す受験生、その保護者の皆さんにとって必要なことは次の通り。
・値上げが行われた場合に備え、余裕を持った学費を準備すること
・値上げによって学費が不足した場合の対策について考えておくこと
・いつ、どのくらいの値上げが行われるのかという情報を早めにつかむこと
大学進学のためのマネープランを考えるうえでは、学費について調べることとあわせ、学費の値上げを念頭においたうえで計画をたてることが重要です。 学費ナビでは、学費を調べるだけではなく、志望校を「お気に入り」登録することで毎年更新された学費情報を確認することもできます。
便利な機能を使いこなして大学進学のマネープランに役立てましょう。

【参照資料】
※1 学費ナビ「国立大の学納金を150万円に」発言の背景は?」
https://www.gakuhi-navi.com/article/vol13/
※2 東京大学 授業料改定及び学生支援の拡充について
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z1304_00101.html
※3 文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/mext_02654.html