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名門・難関大学 大学選びと入試偏差値

名門・難関大学
大学選びと入試偏差値

大学入試に挑む人の中で、「入試偏差値」など、学力そのものを意識するのは、共通テストがある1月と、実際に一般選抜試験が行われる2月と3月です。
大学選びと入試偏差値、そして名門・難関と言われる大学に合格することは、受験生にとっての最大の関心事です。
なぜなら、受験する偏差値が高いとされる大学へ行けば周囲から尊敬を受けるし、就職活動では書類選考の段階から有利に扱われるとされていることから、大学ランキングの上位に位置する大学を選びたくなるのは普通の感情でしょう。
そしてそのランキングで使われるのは、入試の難易度を示す「偏差値」です。大学入試において、どういう意味をなすのでしょうか。

偏差値は試験の平均を50とした時の自分の位置を示すもの

「偏差値」とは、ある試験を受けた集団の中で自分の位置を示す数値です。平均点を50として基準に定め、平均点より高い点数なら偏差値は50より上に、低い点数なら50より下に位置づけられるものです。
そんなわかりにくいものよりも、100点満点の試験の点数を基準にすれば簡単なのですが、科目数が複数で、更に科目ごとに配点や難易度が違ったりするとわかりにくくなってしまうので、異なる科目をそれぞれ平均点を基準に計算し、ちょうど平均点を取れている人は50と定め、概ね25から75くらいの範囲内で偏差値が決まります。例えば、1000人が受験する同じ試験の平均点を基準に集計すると、その平均点に近い得点をする人が多くなります。その平均点を「偏差値50」と定めた時、正規分布だと、偏差値41から59に位置する「平均点に近い得点者」は680人となります。そして偏差値60以上の位置に属するのは160人(同時に偏差値40以下の人たちも160人)となります。つまり、ある試験を受験して、「偏差値60」と算出された人は、1000人中上位160位、100人なら上位16位の得点だったということになります。

このヒストグラムは、偏差値の正規分布を表したものですが、例えば着色した部分の偏差値60から69は全体の13.9%、その右の偏差値70以上に位置する人たちは2.2%ですので、確かに偏差値60以上はエリートと呼ばれても間違いではありません。

大学受験で算出される入試偏差値は予備校が模試のデータと合否を活用

早稲田は67とか、慶應は70、MARCHと呼ばれる私立大学群は約60以上などと聞いたことのある人も多いでしょう。これは何を基準に算出されるのでしょうか。
通常、偏差値を算出して発表するのは、主として受験生向けに模擬試験などを実施している大手予備校です。ある予備校が算出した偏差値で「偏差値60」を記録した受験生100人のうち、50人が早稲田のある学部を一般選抜で合格したら、その学部を偏差値60と表記し、また、偏差値58の受験生の合格者は40%だった、偏差値62の受験生の合格者は60%だったといった過去の記録をもとに、A判定とかE判定など、合格可能性も併せて算出します。
したがって、膨大な模擬試験受験者数と、実際の大学受験・合否データが必要なので、大手予備校とされる「河合塾、「駿台予備校」、「東進ハイスクール」、そして予備校ではありませんが、「進研模試(ベネッセ)」などが、それぞれの偏差値を算出する企業として有名です。いうまでもなく、模擬試験の科目・難易度、実際の入試問題の難易度や受験者数、選択式(マークシート)の問題による偶然の正解など、様々な要素が加わって誤差は生じますが、受験者が多ければ多いほど概ね信頼できるデータで、偏差値は重要な判断基準といえます。

名門・難関と呼ばれる大学は入試偏差値が60以上だが

エリートと非エリートを分ける基準が「偏差値60」とする基準がはたして妥当なのかという問題もありますが、仮に60以上がエリートと考えてみましょう。
通常、大学のランキング等に使われる入試偏差値は、「模擬試験」の受験者が実際に大学の「一般選抜」を受験した時の合否を基準に算出されます。つまり、あくまで一般選抜のみを対象にしたものになります。
近年では、一般選抜の受験者数が少なくなり、推薦の有無とは無関係に行われる総合型選抜や、付属校からの推薦枠やスポーツ推薦を含む学校推薦型選抜が増えています。そう考えると、あえて一般選抜の募集定員や合格者を減らすことで、成績上位者しか合格させないため、見かけの偏差値を高めにコントロールする大学もあって、問題になったこともあります。
それでも、首都圏ではMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)、関西圏では関関同立(関西・関西学院・同志社・立命館)と呼ばれる学校群が偏差値60以上とされ、エリート校に準ずる地位にあるとして人気です。

大学受験予備校が活用する大学群の意味と弊害

偏差値を基準にして、語呂の良い大学群の名称は、大学本部の存在する地域と予備校が算出する入試偏差値などから作られた造語です。首都圏では「早慶上智」「MARCH」「日東駒専」などが良く知られていますし、同じ国立大学でもかつて帝国大学と呼ばれていた「旧帝大」といった分類も有名です。これらは1960年代から進学雑誌などが始まりとされています。
ただし、こうした分類に振り回されると、不必要な競争を生んでしまい、その結果、学生の貴重な時間と教育にかかる費用などを浪費してしまう可能性があります。実際に大学名に振り回された人の例を挙げてみます。
例えば、法律学を学びたいのであれば、その名も「法学部」へ入学するのが最適です。ベネッセの算出するランキングでは、以下のような2つの法学部と偏差値が出てきました。

59 専修大学(法学部)
53 武蔵野大学(法学部)

「法学部」で比較すると、難易度は専修大学が上です。もしあなたが偏差値55だとしてこの2校を受験するとすれば、専修大学は落ち、武蔵野大学に合格する可能性が高いはずです。ところが、こんな学部を見つけることができました。

53 専修大学
(ネットワーク情報学部)

専修大学ネットワーク情報学部では、法学部受験者と同じ文系科目のみで受験が可能です。すると、法学部を目指している偏差値55のあなたは、「武蔵野大学法学部」と「専修大学ネットワーク情報学部」の両方に合格できるということになります。
この時、大学のランクとか、知名度で考えれば、「日東駒専」と呼ばれる大学群に属する専修大学の方を選びたくなります。有名だし、入試偏差値も高そうなイメージだからです。しかし、本来学びたかった法学部とは、学ぶ内容が大きく異なります。
このように、学びたい学問領域よりも大学のブランドを優先してしまったがために、苦しい学生生活を送る人たちもいます。
過去に取材した方には、医師になりたくていくつかの大学を受験したら、慶應の医学部と東大の理科1類(工学部・理学部)に合格してしまい、東大を選んで、その大学名のインパクトで人から尊敬を集めるものの、自分の目指していたものとは異なるから後悔したとか、あちこち受験する中で早稲田のスポーツ科学部に合格したものの、興味が持てずに早々に退学したなど、大学名にこだわることの弊害が意外と大きいのです。

大学選びは入試偏差値だけではなく、コスパとタイパ、そして興味が大切

大学へ行く以上、大学が歴史ある名門校か、人から尊敬されるか、誰もが知っているかなどは大切な要素です。しかし、これから4年間、身を投じて学ぶ場が、実はやりたいこととはかけ離れていたとなってはもったいないものです。
確かに国立大学とか、早慶上智とか、旧帝国大とか、名前だけでもブランド価値のありそうな大学は存在します。
しかし、ある名門大学へ行くために、浪人を重ねるとか、実家から離れて一人暮らしをするとか、好きでもない学部・学科を選んでしまうというのはどうなのでしょうか。 もし合格できる大学、合格できた大学の中に、「さほど有名ではないけれど、自分の学びたい学問分野がある」のなら、大学名にこだわる必要はありません。

松本肇(まつもと・はじめ)
教育ジャーナリスト

専門分野は大学改革支援・学位授与機構を活用した学位取得方法、通信制大学・通信制高校・高卒認定試験・専門学校など。著書「短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒」等。
いわゆる「学歴フィルター」と呼ばれる価値観よりも、大学で得られる「アカデミックスキル」という数値化しにくい教育の有無に関心がある。
日本テレビ「DayDay.」、フジテレビ「めざまし8」、「ホンマでっか!?TV」、ABEMA「アベマプライム」などでゲストコメンテーターを務める。